前書き為替レート・金利・CPIを通して観る日本と諸外国比較
前記事では米株価指数推移を見ながら世界規模で起きている経済変動が歴史的規模にあること、そしてドル円レートを見ながら、中でも日本が苦境(不景気下における物価高騰)に晒されていることに触れてきました。今回はさらに為替レートの背景を深掘りしながら、また「日・米」から範囲を広げ、欧州・アジア隣国との比較に振れたいと思います。
為替レート推移:対米ドル・対ユーロ・対豪ドル・対韓ウオン
それでは早速、円と諸外通貨との為替レート推移を見ていきます。前回触れた対米ドルに加え、対ユーロ・対豪ドル・対韓ウオンを見て行きます。それぞれを個別で見て行く考え方もありますが、ざっくり全体を捉えるため、少しデータを加工して一つのグラフにまとめました。まずはそのグラフを見ていただきます。
ご承知の通り、米ドル円は直近で約140円/USD、韓ウオン円レートは約0.1円/KRWと数値水準が大きく異なり、そのままではひとつのグラフにまとめると読みずらいものになります。そこで(グラフ範囲の)10年間の各為替レート平均値で時系列値を除することで指数化し、ひとつのグラフ内に収めています。例えばグラフ上、ドル円の直近値が約1.27になっているのですが、これはここ10年のドル円為替レート平均値に対し、直近が1.27倍となる円安ドル高状況にある、ということを示しています。
同様に他通貨に対しても円は安値で推移しており、ユーロ円はここ10年平均の1.12倍、豪ドル円は1.10倍、韓ウオン円は1.08倍になっています。以上をまとめますと下記のとおりです。
(1) 円は対米ドル・対ユーロ・対豪ドル・対韓ウオンいずれに対しても直近で安値で推移。
(2) 中でも対米ドルに対する円安が顕著。
円安の背後にあるもの:各国金利推移(日・米・仏・独・豪・韓)
ニュースなどで言われている通り、対米ドル円安は日米の金利差が直接の原因とされています。そこで日・米・仏・独・豪・韓の国債(10年)金利推移を見てみます。
下のグラフの通り各国軒並み金利高に向かっています。日本だけが例外です。
特に米国・オーストラリア・韓国の金利上昇が顕著です。対してフランス・ドイツは若干ですが低い水準にあります。
私が最近聞いたところによりますと「ヨーロッパの物価高は『コスト・プッシュ』要因によることろが大きい」「米国の物価高は『コスト・プッシュ』要因に加え、『デマンド・プル』要因の双方によるもの」とのこと。
これは前記事で「物価高騰要因として『a.モノの供給不足』『b.モノの需要増加』がある」としましたが、前者『a』が『コスト・プッシュ』要因、後者『b』が『デマンド・プル』と同義です。つまり、ヨーロッパは日本に似た「スタグフレーション(景気悪化状況での物価高騰)」寄りの状況にあるものと思われ、そのため米国ほど金融引き締め策に積極的でないものと思われます。
消費者物価指数(CPI)前年同月比推移(日・米・仏・独・豪・韓)
次に消費者物価指数(Consumer Price Index)の対前年同月比推移を日・米・仏・独・豪・韓について見てみましょう。
2021年春ごろ~2021年夏ころまで米国のグラフが最も高いところにありましたが、直近ではドイツがより深刻な状況にあるようです。しかし、前項で見た通り金利は米国のほうが高いところを見るとドイツの物価高騰はコスト・プッシュ要因が大きく、米国とはやや事情が異なると考えられます。
一方、上のグラフに見られるように、米国の物価高騰は金融引き締めが効いたようでようやく落ち着きを取り戻しつつあるようです。結果として2つ上のグラフに見るように、ドル円為替レートが円高方向に戻りつつあります。
金融引き締めで解決に向かう米国経済の一方で、日本は見かけ上、デマンドが盛り上がらないコスト・プッシュ型のスタグフレーションです。その証拠に金融引き締めなど日本では恐ろしくて実行できない状況なのです。つまり、両国の経済は依然として対極的な性格を持っているわけです。次の記事では両国経済を比較してみたいと思います。