真剣10代しゃべり場 リターンズ!!:10代の不安と楽観、大人の懸念

日本の未来

真剣10代しゃべり場 リターンズ!!

  昨日たまたまテレビをつけたら「真剣10代しゃべり場 リターンズ!!」という番組をやっていて、私が見たのは30分ほどだったと思いますが、思わず見入ってしまいました。

  内容の詳細は割愛しますが、10代の少年・少女らが本音で意見交換するというものです。うち1人の少女(高校生)が「政治に興味を持たなければいけない」「政治を正しく導く責任が自分たちにある」と言ったいわゆる「正論」を展開する中、他のメンバーは共感せず「自分は今に満足している」「自分には政治よりはるかに情熱をもって打ち込むものがある」と言った「日常」で応じ、終始噛み合わないままに終わってしまう、そんな内容でした。「正論」少女はその結果に落胆し、ショックを受けていたようです。

  私のような経験豊富な60代のおじさんからみると「正論」少女が同年代メンバーから何故、共感や同意を引き出せなかったかよく分かります。彼女の問題意識があまりに漠然とし過ぎていたからです。私なら具体的な問題に落とし込んで議論しようと思います。ただ、具体的でリアルな政治問題(利害関係者が多く存在)をNHKの番組で扱うことにはハードルが高く、実現性は低いかも知れません。

  ただ言えることは「正論」少女の「不安」は極めて的確で、私も日本人全員が「政治に関心を持たなければならない」と思っています。

しかし政治問題はマスメディアでは扱えない何故なら、マスメディアは多数の利害関係者に配慮しなければならないから

  なので、ネットやブログ、YouTubeと言った非マスメディアでこそ、議論が展開されるべきと思っています。

  マスメディアは数多の企業、組織をお客様(スポンサー)としていたり、互いの利害関係に縛られたりしていて、「本当のこと」が言えない宿命にあります。例えば、銀行などで販売されている手数料の高い投資信託を購入するのは「賢い選択ではない」が「本当のこと」なのですが、大手銀行にスポンサーになってもらっているテレビ局がその「本当のこと」なんて言えませんよね。自ずとスポンサーの利益に配慮し、結果嘘まみれになってしまうのです。「嘘つきはけしからん!」とかいくら叫んでも空しいだけです。

野山の関心事

  上で「正論」少女の問題提起が漠然としていたと指摘しましたが、「じゃ、漠然としてない問題提起ができるのね?」と突っ込みが入ると思います。実は私には、たくさん問題提起したいことがあるのです。

  そのひとつと言いますか、非常に大きな問題と思っていますが、「日本経済の持続可能性」に大きな懸念を持っています。本ブログでも、たびたび話題に挙げている通りです。非常に大きな問題・テーマであり、今後も深掘りしながら書き続けますが、ここでも少し触れたいと思います。

国の借金のつけが若い世代の負担になる!?本当か?

  「国の借金のつけが若い世代の負担になる」とか言うじゃないですか。この論法で「増税反対」という真っ当な意見を抑え込む勢力が存在しますよね。つまり「今、増税しないと増々若い世代の負担が膨らむから増税を受け容れろ」というプレッシャーです。しかし、低迷を続ける日本経済でまた増税なんかしたら、さらに消費が委縮してしまいますよね。そうすると日本経済の成長にブレーキが掛かり、税収にもマイナスに作用します。その結果、「さらに税率を上げないと持たない」となると私は見ています。つまり「増税が増税を生む」と。

  一方、グローバル巨大企業で常識になっている「租税回避」という動きがあります。例えばAmazonという米企業は、同業である楽天に対してはるかに納税額が低いのだそうです。AmazonのCMってとてもハートウォーミングで美しく楽天のCMクオリティを遥かに凌いでいるように思われます。しかし、楽天よりはるかに低い納税を通し、膨らませた資金であのCMを制作していると考えると、本当にハートウォーミングですか?

  日本国民に「増税を受け容れろ」と言う暇があったら、「Amazonからもっと税金をとる」であるとか「Amazonではなく、楽天から購入するように促す」であるとか優先してもらいたいですよね。しかし、どういうわけか日本の政治家や行政は米国や米国企業に非常に弱腰で、どんなに国民がプレッシャーをかけても絶対に動きません。

政治に期待するのではなく、自ら変わると言う選択肢も

  繰り返しになりますが私は「正論」少女の不安や危機感に共感します。一方、政治に対して楽観的に見えた他の少年・少女の感覚も理解できます。日本において「政治を動かすことで日本を良くする」というアプローチにリアリティが無いのかも知れませんね。だから政治に期待しないし、関心も持たない、必然的な流れと思います。(しかし、それでも私は「日本経済の持続可能性」に懸念を持っており、政治においても逃げることのできない重要課題と共有してゆきたいと思っています。)

  一方、政治の力を借りずとも個人がしっかり納税してくれるECサイトを選択したり、口コミ、ネットを通して他の人にも推奨したりすることなら今日からでもできる事です。政治に関心を持ちながら、政治にプレッシャーをかけるということも進めながら、別の手段も同時に考えながら実行してゆく、したたかさを身に着けたいと思います。

「正しい」とか「正しくない」とかじゃない

  もう一つ印象に残ったこと。「正論」少女が他の同世代から共感・同意を獲得できなかった悔しさに涙したこと。恐らくその涙は番組出演した同世代や視聴者の心を大いに揺さぶったと思います。

  同調圧力に屈することなく、真剣に自分の想いを伝えようと努力し続けた彼女の姿は、日常で目にすることは稀です。それだけに驚きとともに尊敬の念を覚えた者は少なくないでしょう。

  だからと言って、彼女に同調すべきとも思いません。上で私が書いたように、彼女の意見は正しい一方で、違和感を持つ感覚もあって自然なのです。

  彼女の涙は彼女の「敗北」を意味するものではありません。一方、安易に流されることなく、自分の意見を述べた他のメンバーは彼女の涙に罪悪感を持つ必要もなく、「正直に自分の意見を述べた」ことに自信を持つべきです。

  そもそも議論することは勝ち負けを決めることを目的としません。誰が正義で誰が悪か?そんな薄っぺらい漫画の世界とも違います。自分の意見と違う意見を目の当たりにすると緊張し、プレッシャーから逃げ出したくなります。だからこそ、この番組が視聴者の心に刺さったのだと思います。

  異なる意見を安易に否定する場面を日常的に目撃しますが、異なる複数の意見を矛盾なく包含する新たなアイデアが生み出されたら素晴らしいことですし、そのような創造性の発現こそ「議論」や「討論」の真の目的なのだと思っています。

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