コロナがもたらす歴史的経済インパクト:S&P500株価指数・ドル円レートを通して観る日米比較

データ分析

前書きS&P500株価指数・円ドルレートを通して観る世界・日本経済

   このブログのキーワードの一つを「データ分析」というものがあります。これは「手段」と呼ぶべきもので、今回の「目的」は日本や世界状況の現状把握、背景の深堀です。その動機の大きなものは知的好奇心ですが、できれば問題解決に向けた何らかの提案・提言に結び付けられたら最高です。

   これをデータ分析という手段、つまり事実の観察を通して進めることで個人(=野山)の主観を排除し、一定の説得力に結び付けることを狙っています。基本的に「データに語らせる」スタイルをと目指しています。

   まずは、投資家の関心が高く、米国のみならず世界経済の指標としても有用なS&P500株価指数、そして日本への大きなインパクトをもたらす円ドルレートを見ていきます。

コロナがもたらした経済インパクト(世界・主として米国)

S&P500株価指数に見る歴史的経済変動

   下の図は1990年~現在(2022.11月)というロングレンジでS&P指数推移を見たものです。

   こうしてみると、現在の経済が、ITバブル崩壊・リーマン・ショックといった歴史的経済危機状況に匹敵する状況にあることが分かります。

コロナ・ショック以降の異常な株価指数急上昇

   今回の株価指数変動が歴史的に見ても大きなものであることを確認したところで、もう少しショートレンジで、S&P500株価指数推移を見てみます。(2013.11月~現在)

   2020年のコロナ・ショックがもらしたインパクトが、パルス的に極めて短期間に収束。むしろコロナ・ショック前に比べ、後のほうが株価指数の上昇が「急」になっているのが分かります。

   コロナは明らかに世界経済への大きな減速要因でした。にもかかわらず「コロナ・ショック」時点での株価インパクトは非常に短期的で、むしろ直後に「急上昇」しています。これは新型コロナという問題が短期間で解決されたからではなく、コロナによる経済減速を抑え込もうとする金融政策が作用したものと考えられています。

   コロナ禍における株価急上昇を指して「コロナバブル」という言葉もあるようです。コロナの経済インパクトを最小にすべく、巨額の給付金が投入され、その資金が金融資産に向かった。その結果としてのバブルと解釈されています。

   つまり

    ① コロナ禍
           ⇒ ② 経済減速懸念
                 ⇒ ③ 金融緩和政策・給付金
                     ⇒ ④ コロナバブル(金融資産高騰)
                      

という流れです。

コロナバブル以降のS&P500株価指数急下落

  そして現在、特に米国において歴史的インフレ(物価高騰)が起きています。このインフレ状況に対処すべく米国当局が金融引き締めを強力に推進、結果、金融市場から資金が流出、株価指数急落に繋がっています。

日本経済の米国との違い

米国はインフレ、日本で起きているのはスタグフレーション

   米国における物価高騰の要因は、主に下記のようなものです。

    a.モノの供給不足
      a-1 コロナによるグローバルサプライチェーンの崩壊 
      a-2 ロシア・ウクライナ戦争によるエネルギー供給難

    b.モノの需要増加
      b-1 「コロナ弱毒化⇒楽観ムード」による消費回復
      b-2 コロナ給付金による可処分所得上昇(米国)

   日本においても物価上昇が我々を悩ませています。しかしながら、日本ではこれをインフレと呼ぶのは少数派でしょう。何故なら、日本では上記「b.モノの需要増加」は弱く、もっぱら「a.モノの供給不足」要因で物価高騰しているからです。このような状況を指して(インフレではなく)「スタグフレーション」という言葉が使われます。

   つまり、表面的には米国同様、物価高騰が起きている日本ですが、米国とは全く状況が異なっているわけです。米国では「b.モノの需要増加」を抑え込むため、金融引き締め(金利上昇)を強化していますが、景気が悪く「b.モノの需要増加」が無い日本で金融引き締めなどやったら、ますます景気が冷え込むことになります。

   従って、日本では相変わらず金融緩和(低金利)を継続しています。逆に米国では高金利に向かっているわけですから、下図の通り「ドル高・円安」がとんでもない勢いで進行中です。この円安が、ますます景気低迷下での物価高騰、つまり日本のスタグフレーションを深刻化させているわけです。

   「日本も長く続いたデフレを脱却しインフレに向かっている」という人もいるようですが大間違いです。日本で金融引き締め策が取られて初めて「日本もインフレに向かっている」と言えるのです。

日本のスタグフレーションは人災?

   現在の経済状況はコロナという世界的天災が発端になっていますが、各国の対応は一様ではなく、そのため上記のように日本と米国ではある意味真逆の状況にあります。それが我々日本国民の苦しみを深めているとすれば、それは人災なのでは?と疑問を持ってしまいます。

   つまり、コロナ禍に対して日本が別の対応をとっていれば、より良い状況を造れたのではないかと思えるのです。そんな仮説が私の頭の中にあります。以降、そんな仮説を共有しながらデータ分析を通して検証してゆきたいと思っています。

データ分析に用いたpythonコード

   野山は従来、もっぱらexcelを用いてデータ分析を行っていました。しかしながら生産性向上を狙い、今後はpythonコードでデータ収集~データ可視化まで処理しようと考えています。今回初めてやってみたのですが、コードを完成させるまでの学習には時間がかかったものの、非常に短いコードでデータ収集~データ可視化出来てしまったことに驚いています。

   ご参考まで、下記の通り共有いたします。ちなみにGoogle Colab上でプログラムを実行しています。

from pandas_datareader.stooq import StooqDailyReader
from datetime import datetime
import matplotlib.pyplot as plt
from google.colab import files

start = datetime(1990, 10, 8)
end = datetime(2022, 11, 8)
brand = '^SPX'

stooq = StooqDailyReader(brand, start=start, end=end)
data = stooq.read()  # pandas.core.frame.DataFrame
plt.figure()
data[['Close']].plot()
plt.savefig('soft.png')
files.download('soft.png')
!pip install pandas-datareader

import pandas as pd
import datetime as dt
import numpy as np
import pandas_datareader.data as web
import matplotlib.pyplot as plt
from google.colab import files

start = dt.date(2013,11,4)
end = dt.date(2022,5,20)
code1 = 'SP500'
code2 = 'DEXJPUS'

df1 = web.DataReader(code1,'fred',start,end)
df2 = web.DataReader(code2,'fred',start,end)

df3 = pd.concat([df1, df2], axis=1)
df3["SP500(JPY)"] = df3["SP500"]*df3["DEXJPUS"]

df3.plot(y="SP500") 

plt.savefig('SP500.png')
files.download('SP500.png')

df3.plot(y="DEXJPUS") 

plt.savefig('DEXJPUS.png')
files.download('DEXJPUS.png')

df3.plot(y="SP500(JPY)") 

plt.savefig('SP500(JPY).png')
files.download('SP500(JPY).png')
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