いやー、凄かった!
2010年に始まる日本女子バレーの大躍進を思い出します。2010年の日本女子代表が夏のWorld Grand Prix(現在のVNLの前身的大会)で順位は5位ながら、ブラジルを破るという快挙を達成。勢いに乗った日本女子はその秋、世界選手権「通称:世界バレー」で、32年ぶりのメダル(銅)を獲得します。以来、低迷を続けていた日本女子バレーは一躍世界の強豪チームに躍り出ます。その再現を男子で見られるのではないか?もしかすると、2010年~2030年の日本女子(概ね、世界ランキング3位)をはるかに超えるんじゃないか?そんな気がしています。
ブラジルは国民性なのでしょうか、本当に素晴らしいチームです。日本に2セット連取されても全く同様とか焦り、不安を見せない。女子ブラジル代表もそうですが、崖っぷちに追いやられても、淡々とやるべきことを積み重ね、当たり前のように逆転する。そんな印象があります。私の南米の人の印象は、「ノッテルときはとんでもない集中力を見せるが、追い込まれると途端に集中力を切らす」というものです(凄い偏見ですね💦)。しかし実況解説者も言っていましたが、ブラジルチームの我慢強さはまるで(良い意味での)日本人のようでした。私は安易に「サムライ」と言う言葉を使うのは好まないのですが、「サムライ」対「サムライ」のような試合でした。最後の瞬間までどちらが勝つのか、全く予想できない展開。私が特に感動したのは宮浦選手の第5セットの頑張りです。試合後のインタビューでも如何にも高揚している感じが見て取れましたが、本当に素晴らしい活躍でした。
前置きはこの辺にして(笑)、データを見ていきましょう。「アタック効果率」等の用語については以前の記事を参照してください。
日本vsブラジル戦:両チームのパフォーマンス比較分析
まずはチームとしての総力の比較です。最初は得点力です。
アタック効果率(Attack Efficiency)は僅かではありますが、ブラジルが上回っています。しかしチームの総アタック打数(Attack Total_sum)で上回った日本が総得点(バブルサイズ)で上回っています。この点の取り方は日本の守備の良さに支えられています。
次に守備ですが、レセプション効果率(Reception Efficiency)で大きく上回る日本がレセプション+ディグ成功数で大きくブラジルを上回っています。その結果として、より多くの良質なトスが日本のアタッカーに供給され、得点チャンスを膨らませているという構造です。
次にサーブとブロックです。
サーブ(Serve Efficiency)では、両チームに大きな差はありません。
ブロック(Block Efficiency)に関しては、ブラジルが上回っています。結果として、日本のアタック効果率が押し下げられていると考えられます。
日本vsブラジル戦:選手別のパフォーマンス比較分析
得点力
この感動的な試合、選手別のデータ分析にも気持ちが入りそうですね。普通、分析に気持なんかはいらない者なんですが、思わず選手を称えたい気持ちが湧き上がってきます。やはり、「叩くより、称え合う」ほうが気持ち良いですしね(笑)。
まずは日本チーム各選手の得点力です。
比較すると分かりやすいので、ブラジルチーム各選手の得点力チャートも掲載します。
繰り返しになりますが全体にアタック効果率はさほど変わりませんが、アタック打数で日本チーム選手が上回り、より多くの得点を稼ぎだしています。
ブラジルで最も打数の多い21番の選手ですら32本の打数(バブルにマウスを当てますと各選手の詳細なデータが表示されます)に留まっていますが、日本チームでは、12番の高橋藍選手が31本、4番の宮浦選手が37本、14番石川キャプテンが43本打っています。
男子の試合でいつも感心するのですが、石川キャプテンと高橋藍選手はテクニシャンで状況判断が素晴らしいですね。日本女子が強かったころは木村沙織選手の機転が際立っていました。木村選手は後に筋力もついて強打が目立つようになりますが、むしろ選手として有能だったのはまだ筋力面で非力に見えた2010年~2012年ころ「マジカルさおりん」と呼ばれていたころ、機転を利かせてトリッキーなフェイントやプッシュを多用し、相手チームを翻弄していました。バレーの名選手には必ず備わっている、と言っていいほどの素養と思います。筋力だけでバレーをやっていると体力面で不利になったり、ケガをするリスクも増すと思われます。
そして私が最も心を動かされたのが宮浦選手、そしてチームの宮浦選手との関わり方です。
上のチャートは第1~第5セットの累計でのデータになりますので、セット別の得点力成績は見えないのですが、この日の宮浦選手はセット毎に大きくアタック効果率が変動していたと思われます。第3、第4セットはブラジルチームのブロックが宮浦選手を抑え込んでる印象がありました。現在の日本女子代表ですと、選手交代が頻繁に行われます。それを見ているせいもあって、私は「心が折れているのでは?」「交代させたほうが良いのでは?」と感じていました。
しかし、チームは第5セットも宮浦選手をコートに立たせます。そして関田セッターはこのセット最初のトスを宮浦選手に上げ、相手ブロッカーにドシャットを食らいます。それでもまた宮浦選手に上げ、このセット2点目に繋げる関田セッター、驚くとともに鳥肌が立ちました。しかし、これで宮浦選手も覚醒したんじゃないでしょうか?第5セットを取り切れたのは宮浦選手の頑張りによることろが大きかったと思います。
守備力
次に守備力です。下が日本チーム各選手がこの日見せた守備力パフォーマンスです。
次にブラジルチーム各選手の守備力パフォーマンスです。両者を比較してみましょう。
やはりリベロの山本選手を中心に石川キャプテン、高橋藍選手のレセプションが安定していますね。ブラジルチームも17番のリベロの選手のみレセプション効果率が高いのですが、その他の選手が安定していません。
日本のチャートを見てお気づきかと思いますが、宮浦選手がディグを不得意にしているのか、たまたまこの日不調だったのか分かりませんが、ディグ効果率がマイナスになっています。ディグ効果率がマイナスと言うのはディグを上げた本数より、ディグをミスって失点した本数が多いことを意味します。試合中もディグをミスる場面が印象的でした。この点も私が「宮浦選手は心が折れている」と感じた理由になっています。
それでもチームが宮浦選手を信じ続け、宮浦選手も見事、第5セットに立ち直り、チーム勝利に大きく貢献したのはとてもドラマチックで感動的でした。
「このチームの強さは本物」そんな想いが日に日に強まります。
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