昨日のブルガリア戦は完勝でしたね。日本代表チームの選手別得点力チャートだけ掲載します。例によって、バブルの重なりは凡例をクリックして解消できますので、よろしくお願いいたします。
トス配分はかなり自然になりました。また古賀キャプテンもアタック効果率47.8%と大幅に復調しました。
考えてみれば、
(1) 長らく続いた「古賀キャプテンへのトス集中
⇒ (2) 対戦相手が古賀対策を徹底
⇒ (3) 古賀キャプテンのアタック効果率低迷
と言うメカニズムが働いていたものと考えられます。当然の成り行きですね。
とは言え、上のチャートで明らかなようにアタック効果率が高かった林選手へのトス配分が少なめです。試合放送でも「トスがレフトに偏りがち」と指摘されていました。トス配分の改善が進まないのは、セッターポジションを関選手が独占してきた弊害でしょうか?コート内の選手とベンチ間のコミュニケーションの欠落?そもそも誰もデータを見てない?
何が原因かわかりませんが、データを活用しない中で「best4入り」とか「メダル獲得」を狙うとかありえない話です。目標達成に向けて、現状認識するにも、課題認識するにも、改善計画を建てるにも、改善進捗モニタリングするにもデータ活用が基本です。
さて、本題に移ります。
いよいよ運命の3連戦です。3強である日本・ブラジル・トルコのこれまでの試合の累計データをもとに戦力比較してみましょう。
もちろん、ベルギーには既に勝った気になってこの記事を書いてます(笑)。
日本・ブラジル・トルコ戦力分析[得点力比較(選手別)]
下は、3チームそれぞれの4試合累計データによる得点力チャート(選手別)です。例によって横軸はアタック効果率(Attack Efficiency)で各選手の得点能力指標を示すもの。縦軸はアタック本数、但し、複数の試合の累計なので、セット当たりの本数で表示しています(*1)。またバブルサイズは、セット当たりの総得点を示しており、バブル上に数値を表示しています。各用語の定義などは過去記事にまとめています。
(補足*1:例えば、5セットマッチが多いチームと3セットマッチが多いチームを比較する際、セット当たりの数値とすることで公平な比較が可能になります。第5セットは15点制なので0.6セットとカウントしています。)
ちなみに各チャートにバブルが5つしかないのは、各チーム総得点上位5名の選手に絞ってバブル表示しているためです。
まずは日本チーム。
次に、ブラジルチーム。
最後にトルコチームです。
こうしてみるとOHに関して言えば、日本は決してブラジル・トルコに劣っていないですね。もちろん、ブラジル・トルコともに格下相手の試合であり、「本気度」には多少の疑問は残ります。日本との試合では両チームともに猛獣のように日本に襲い掛かってくるでしょう。
しかし、日本にはまだ本格稼働していない和田選手のポテンシャルが潜んでいます。また、トス集中の弊害から解放された古賀キャプテンはアタック効果率が本来のレベルに戻っています。OH陣の力から見て日本はブラジル・トルコを抑えて、この大会を首位通過する可能性もあるかと思います。
攻撃面で日本チームに欠けているもの
ブラジル・トルコにあって、日本にないものは「得点力のあるMB」です。昨日は山田選手が活躍し、トータル9得点(アタック+ブロック+サーブ)。セット当たり3点ですので、これをコンスタントに達成できれば「得点力のあるMB」と言えます。しかしそれは難しいでしょう。
山田選手を否定するつもりはありませんが、2人のMBのうち少なくとも1人は「得点力のあるMB」が必要です。そうすることで相手ブロッカーの注意を分散させ、ブロックの抜け道ができ、チームとしてアタック効果率を上げることができます。
宮部愛理選手が有力では?ブラジル・トルコ戦のコートで活躍する宮部選手、期待したいですね。
日本・ブラジル・トルコ戦力分析[守備力比較(選手別)]
次に守備力を示すチャートです。横軸はレセプション効果率(Reception Efficiency)で選手のレセプションスキル指標です。縦軸はディグ効果率で選手のディグスキル指標になります。バブルサイズはセット当たりのレセプション+ディグ成功数を意味し、バブル上にその数値を表示しています。また各用語の定義などは過去記事にまとめています。
なお例によって、バブルの重なりは凡例をクリックして解消できますので、よろしくお願いいたします。
まずは日本チーム。
次にブラジルチーム。
最後にトルコチームです。
まずレセプション、つまり横軸に注目しますと、トルコチームのバブル群が明らかに他チームより右寄りに寄っています。つまり、最もレセプションが安定しているのがトルコチームということになります。
次にディグですが、これに関してもトルコチームが頭一つ出ている感じです。ブラジルチームは10番の選手(有名な通称「ガビ」選手)に頼り切ってる感じですね。
日本の守備力はトルコに対抗する意味で、もう少し強化したい。今大会、出番の少ない西村選手の登場に期待したいです。
ブラジル戦に賭けるのが得策か?
以上の分析を見ると「トルコ戦を捨て、ブラジル戦に賭ける」選択が直感的に得策のようにも思えます。そうすることでトルコ戦での消費エネルギーを最小化し、ブラジル戦で爆発できるような、直感的にそんな気もします。しかし本当にそうでしょうか?負けたら負けたでメンタルは落ち込みます。しかも最初から勝つ気のない試合をすること自体、メンタルに良い作用をもたらすでしょうか?「負けるとあらかじめ決めた」ことがバレると不味いことになりますから、バレないよう、そこそこ頑張らなければいけません。そう考えると、結局「消費エネルギーを最小化」することはそもそも可能なのでしょうか(笑)?
私は、セコイことを考えず、トルコ戦・ブラジル戦ともに全力で戦うべきと思っています。その理由は「トルコ戦で負けることが決まったわけではない」からです。すべての出来事は確率的に起きます。確かにトルコは強い。しかし、上のチャートを見る限り、決定的な差があるようには見えません。
確かにVNL終了時点でトルコの世界ランキングは1位で、日本のそれは8位でした。しかし日本チームはVNL終了以降、確実に進化していると思われます。「古賀キャプテンへのトス集中症」も治癒しましたし、「眞鍋監督のコロコロ選手交代症」も治癒しました。「眞鍋監督の速いトス大好き症」も治癒の方向に向かっています。
例えば「日本がトルコに勝つ確率は30%で、ブラジルに勝つ確率は50%」、そんなイメージと思います。仮にこの見積もりが正しければ、
◇ ブラジル戦に賭けて、パリ五輪への切符を獲得する確率=50%
◇ トルコ、ブラジル戦ともに全力投球で、パリ五輪への切符を獲得する確率
=100% – [(100% – 30%) x (100% – 50%)] = 65% (*2)
(補足*2:確率の計算間違いを修正しました。9月23日)
です。後者のほうがお得ですよね!
さらに言えば、上記チャートによる戦力分析はあくまでも「平均値を比較する」モノです。実際にはアタック効果率にしろ、レセプション効果率にしろ変動します。例として今大会4試合のチームとしてのアタック効果率推移を表示したものを掲載します。各点の下には対戦国名の略称とセットカウントを記載しました。
まずは日本チーム。
次にブラジルチーム。
最後にトルコチームです。
いかがでしょう?「トルコには勝てない」と決めつけるのは間違いですよね?
日本女子代表の勝利への欲望を剥き出しにした戦いに期待しましょう!
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