イタリアにも負けました。
この日も選手を入れ替えが多かったですね。試合前、スターティングメンバーはどのタイミングで本人たちに告げられるのでしょう?スターティングメンバーが、例えば前日に告げられていれば、それなりに翌日のゲームを脳内シュミレーションしたり、プレッシャーとともに責任感が湧き上がってくると思います。男子のように簡単に交代させない方針なら尚更です。女子チームにそのような緊迫感があるように、私には見えません。(裏では悔し涙に暮れてるのかも知れませんけど。。)
日本チーム・選手別パフォーマンス
まずは日本のチームとしての得点力パフォーマンスです。アタック効果率で負けてますね。総得点数もイタリアのほうが12点上回っています。[一方、第1~4セットのスコア表上では日本:イタリアの総得点は93:92で大きな差はないため、イタリアのミスによる失点が多かった、ということになります。]
得点力を選手別にブレークダウンすると下記チャートのとおりです。
今回も右下がりに大きなバブルが2つ並んでいます。アタック効果率の低い選手にトスを集める火の鳥NIPPON名物『謎戦術』健在ですね。
データを過信する愚かさ、軽視する愚かさ
合理的戦術と監督・コーチの役割
この日のOH(アウトサイドヒッター)のパフォーマンスを書き出したのが下記数表になります。
仮に定石通り、アタック効果率の高い選手にトスを多く供給すると下表のとおりになります。(アタック効果率の大きさに比例配分となるよう打数を配分し、シュミレーションしています。)(この日の宮部選手はMBライクなアタックが多かったようですが、本来のポジションはOHであり、OH同等のアタックも可能と想定しています。)
同じアタック打数(計119本)でも、選手別の配分を変えただけで、6点余分に獲得できることになります。この日のスコア表上での日本:イタリアの得点は93:92ですので、日本側に6点余分に上乗せされれば、勝率は大きくアップしたはずです。
これは決してセッターを責めているわけではありません。セッターは試合中、激しく体を動作させています。これは決して思考するに適した状態ではないですよね。ましてや「誰が何本決めて、誰が何本ミスった」なんて覚えていられない。
タイムアウト中にセッターにデータを見せ、『今、誰に上げると最も得点確率が高いのか?』を監督なり、コーチなりが選手に伝えるべきでしょう。それが監督なり、コーチの役割ですよね?
データは必ずしも勝敗を示さない?
2010年~2012年ころの日本女子バレーは世界から尊敬を集める強豪チームでした。当時の眞鍋監督の口癖は「データバレー」でした。所が、最近監督の口から「データ」という単語を聞かなくなりました。なぜでしょう?
「データバレー 真鍋監督」で検索して『AI分析は万能ではない iPad手にデータバレー、真鍋政義日本女子監督の「失敗」』と言う記事を発見しました。そこから監督の口癖から「データ」が消えた理由が読み取れます。
その記事の中に「データは必ずしも勝敗を示さない。」と言う言葉が出てきます。私含めほとんどの人が「そりゃそうだ!」と言うでしょう(笑)?また、「だから何?」と(笑)。
「データは必ずしも勝敗を示さない」が、「〇〇に従えば必ず勝てる」と言い切れる「〇〇」が存在するのですか?ないですよね。
その記事の中に『あらゆるデータを人工知能(AI)も用いて、分析した』がAIも完璧じゃなかった、ともあります。どう思います?そんなのたり前じゃないですか?今、世間を驚かしてるChat-GPTだって平気で間違うというのに。
要するに監督・コーチ・選手の『道具』に過ぎないデータ/AIが神様・仏様であるかの如く過信し、裏切られたとたんに全否定、とまで言わないにしても、過小評価してしまう。そのあげくに、アタック効果率の低い選手にせっせとトスを過剰供給するという大間違いを犯して、負けずに済む相手にも負けてしまう。
この世で起きるすべての出来事が、「確率」で起きているわけで。バレーの世界で言っているデータもスタッツ(統計データ)なわけで、そこから導かれるものは「確率」「予測」に過ぎない、ということを誤解してはいけません。
ある日の天気予報が外れたからと言って、2度と天気予報は見ない、なんて人いないですよね。
否定からは何も生まれない
「データは万能じゃない」「AIは必ずしも信用できない」はその通りでしょう。だから「データ/AIは使わない」と言っちゃいます?「だったら、どうするんですか?」と言う質問に答えられますか?
つくづく思うのですが「否定・批判からは何も生まれない」と。
やはり、データは活用すべきなのです。今後のAIは一気に実用化が進みます。データ/AIを神か仏かみたいに過大評価するのが間違いなのです。
世の中どんどん進化してます。テレビ画面はでかくなってるし、PCの性能もどんどん上がってる。ほんの数年前まで全く役に立たなかった機械翻訳の進化、AIの進化は凄まじい。そんな進化の背後にデータ活用があるわけです。人の勘やひらめきで進化してるわけではないのです。バレーボールも同様です。
人間相手だからデータを活用すべき
データは人間の温かみを否定する冷たい存在と見る人もいるでしょう。むしろデータに基づいて人をマネジメントすることは、組織内の信頼感醸成に不可欠です。
2010年ころ、日本女子代表が頭角を現し始めたころ、「データバレー」と言う言葉を頻繁に聞くようになりました。「データに基づき選手を処遇する」「選手は数値目標を持ってスキルアップに励み、データで進捗を確認する」、と言う世界において選手は「努力すべきことを明確化、集中」できます。
これが無いと、「監督に気に入られないと代表を外されるんじゃないか?」「コーチに気にいられないと試合に出られないのではないか?」など疑心暗鬼になりませんか?
自分の評価指標は「アタック効果率とレセプション効果率だ」等と明確になっていればそれらのデータが改善するような取り組みに集中できますし、それが他選手を下回ったことで主力を外されても納得性が高いし、主力に復帰するために自分がすべきことも明確です。
世界で最も背の低いナショナルチームが世界第3位として約3年君臨できたのは何故なのか?監督はもう一度よく思い出してみるべきですね。
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