最終戦となる米国戦は、やや友好試合のような色彩になりましたね。とは言え、控えの選手の力を見ることができる貴重な機会になりました。特に西田選手の好調の影で出場機会が少なかった宮浦選手の健在ぶりが確認でき、多くのファンにとって、満足な内容だったのではないでしょうか?以下、いつものように、公式サイトが出典元です。
日本は僅差で惜敗という内容です。日本の出場メンバーは言うまでもなく控え選手主体でしたが、米国も同様でした。米国チームのこれまでの各試合での出場選手を下表にまとめました。グレーで網掛けした行の選手が主力選手です。日本戦では主力選手以外の選手が全員出場しています。なお、表の記載内容ですが「〇」が出場選手、「▽」は途中セットで退場した選手、「□」は途中セットから出場した選手です。
従って、今回はチーム全体のパフォーマンス比較にはさほど大きな意味はありません。そこで、さっそく選手別のパフォーマンス分析をしてゆきます。
選手別のパフォーマンス分析
得点力
上に日本チーム、下に米国チーム各選手の得点力チャートを掲載します。例によって、バブルの重なりは凡例をクリックして解消できますので、よろしくお願いいたします。
まずは日本チーム。
次に米国チームです。
17番のOHの選手のアタック効果率(Attack Eficiency)が50%ととても高く、20番のMBは得点力の高さが光っています。対して日本チームはアタック効果率で劣っているものの、以下で触れます守備力の高さを背景に、アタッカーに粘り強くトスを供給し、得点をあげています。結果として「接戦」「惜敗」という結果になっています。しかし、両チーム特性には大きな違いがあり、攻撃力の米国、守備力の日本という構図です。
守備力
日本チーム、米国チームの順で、守備力チャートを掲載します。
まずは日本チーム。くどいようですが、バブルの重なりは凡例をクリックして解消できますので、よろしくお願いいたします。
次に米国チームです。
一見、米国10番のリベロのレセプション効果率(Reception Efficiency)が目を引きますが、ディグ効果率は20%と決して高くありません。結果、レセプション+ディグ成功数は18本と言う数字になっています。
対して、日本のリベロ13番の小川選手、11番のOH富田選手はともにレセプション効果率が約50%、かつディグ効果率が60%ほどあり、レセプション+ディグ成功数はそれぞれ14本、30本あります。(レセプション+ディグ成功数)=(アタッカー打数)とまで単純化できないのですが、2名の守備安定性がアタッカーの打数の多さに貢献しているものと考えられます。
主力選手同士の選手パフォーマンス比較
上記は、両チームともに控え選手主体での結果ですので、主力同士の比較にはなりません。そこで、両チームの主力が戦ったスロベニア戦、セルビア戦時のパフォーマンス比較をしてみたいと思います。まずは得点力(攻撃力)です。
得点力
スロベニア戦
まずはスロベニア戦での日米チーム選手のパフォーマンス比較です。
下はスロベニア戦における日本チーム各選手の得点力パフォーマンスを示すチャートです。
次にスロベニア戦における米国チーム各選手の得点力パフォーマンスを示すチャートです。
OH/OP陣のパフォーマンスだけで見れば、日本チームも米国チームに見劣りしません。しかし、やはりMBの得点力の差が目立ちますね。
セルビア戦
次にセルビア戦での日米チーム選手のパフォーマンス比較です。
下はセルビア戦における日本チーム各選手の得点力パフォーマンスを示すチャートです。
次にセルビア戦における米国チーム各選手の得点力パフォーマンスを示すチャートです。
やはり、OH/OP陣のパフォーマンスだけで見れば、日本チームも米国チームに見劣りしませんが、MBの得点力に圧倒されます。
次に守備力についても同様に比較してゆきます。
守備力
スロベニア戦
まずはスロベニア戦での日米チーム選手のパフォーマンス比較です。
下はスロベニア戦における日本チーム各選手の守備力パフォーマンスを示すチャートです。
次にスロベニア戦における米国チーム各選手の守備力パフォーマンスを示すチャートです。
縦軸のディグ効果率(Dig Efficisncy)では大きな違いはないようですが、レセプション効果率(Reception Efficiency)では米国が上回っていますね。これがMB得点力の追い風になっているのでしょう。
ところで、もしかするとレセプションに関しては20番リベロ山本選手より、13番リベロの小川選手のほうが上手なのでしょうか?
セルビア戦
次にセルビア戦での日米チーム選手のパフォーマンス比較です。
下はセルビア戦における日本チーム各選手の守備力パフォーマンスを示すチャートです。
次にセルビア戦における米国チーム各選手の守備力パフォーマンスを示すチャートです。
縦軸のディグ効果率では日本が若干上回っているように見えますが、レセプション効果率では米国がやや上回っているように見えますね。
パリ五輪でのメダル獲得に向けた男子日本代表の課題
今回の米国チームとの比較結果から導かれる課題は、『MB得点力の向上』と思われます。そのため『レセプション効果率』の強化も必要と思われます。
ところで来年のVNLで男子日本代表はどのような戦いになるのでしょう?既に五輪出場権は取っていますから全力で勝ちに行く必要もないでしょう。そうすることでデータを取られるリスクもあるでしょう。そうは言ってもチームの士気が下がることを避けるためには、連敗や負け越しは避けたいですね。
そこで上記含め、諸課題克服に向け、VNLの場を利用することもできるかと思います。
最後に:可視化された男子日本代表の進化
被ブロック本数の減少
最後に。今大会中の男子日本代表の進化を顕著に表すデータを紹介します。それは、被ブロック本数の減少です。本ブログ筆者がしつこいくらいに言い続けた「硬軟織り交ぜ、柔軟で多彩な攻撃」がしっかりチームに定着した証です。メンバーが変わった最後の米国戦でもとに戻ってしまったのはご愛嬌として(笑)、主力メンバーで戦ったフィンランド戦~スロベニア戦までに実現された着実な進化が、このように見事にデータをもって可視化されたわけです。とても気持ちいいですね。
「日々進化する〇〇」という言葉が安易に使われますが、「感覚的」「社交辞令的」なことが多いように思えます。「日々進化する、とおっしゃいますが、それを示す根拠は何ですか?」などと質問すると、相手は憮然とした表情を見せ、周囲はピリピリムードになりかねません(笑)。男子代表は当たり前のようにデータに基づき、形ある戦術とか対策と呼ばれるものを創造し、実行し続けているようです。そしてもちろん、このように効果検証も行っているはずです。まさに、PDCA(Plan-Do-Check-Action)、科学的データバレーを実践している世界最高峰のチームです。
このような男子代表の姿から多くを学び、女子代表も来年のVNL2024では見違えるような姿を見せて欲しいと願っています。
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