[バレーボールデータ分析][女子OQT2023] 日本vsアルゼンチン戦ふりかえり分析[Excellent!]

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  第1戦はペルー戦。ペルーチームには失礼ですが、日本代表にとってウォーミングアップ的な位置づけの試合でした。そんなこともあり、ペルー戦はスキップし、第2戦アルゼンチン戦の振り返りをしたいと思います。大切な事なので、最初に言っておきます。

   素晴らしい!こんな試合が見たかった!

まだまだ格下相手ですから気を抜いてはいけませんが。もちろんセットカウントは3-0です。

日本vsアルゼンチン戦:両チームのパフォーマンス比較分析

  まずはチームとしての総力の比較です。最初は得点力です。

  アタック効果率(Attack Efficiency)、総得点共に日本はアルゼンチンを圧倒しました。後で選手別のチャートを見ますが、この試合の日本代表選手の攻撃力は衝撃的です。

  次に守備ですが、こちらも特にレセプション効果率(Reception Efficiency)で日本が圧倒的に上回りました。しかし、後ほど選手別のチャートを見ますが、やや疑問を持ちました。

  次にサーブとブロックです。例によって、バブルの重なりは凡例をクリックして解消できますので、よろしくお願いいたします。

  サーブ(Serve Efficiency)・ブロック(Block Efficiency)ともに日本が上回りました。

  以上、チーム比較の3つのチャートがこの試合の完勝ぶりを裏付けています。

日本vsアルゼンチン戦:選手別のパフォーマンス比較分析

得点力

  上記の通りチームとして得点力で大きく上回った日本女子代表ですが、選手別に分析したものが下のチャートになります。上で私が「衝撃的!」と述べたのはこのことです。

  本ブログ筆者は2010~2012年ころの日本女子全盛期からこのチャートを作成してきましたが、日本女子代表のこんなチャート見たことありません(笑)!!

  まずは、MBながら、13点を得点した宮部選手、日本待望の『得点力のあるMB』ついに登場です。日本女子代表は長らくMBの得点力の低さに苦しみ、私の記憶が正しければ、一時MBをリストラし、MB1名・OH4名という異例の布陣で臨んでいた時期もあったかと思います。宮部選手がこの調子を維持してくれれば、日本代表の悩みの一つが解決されます。

  そして何よりビックリなのが井上愛里沙選手! アタック効果率(Attack Efficiency)60.7%(バブルにマウスを合わせるとデータが表示されます)!! OHで、この数字は、いくら相手が格下とは言え、とんでもないです。あの木村沙織選手でもここまでは無かったのでは?少なくとも私の記憶にありません。バレーボールにある程度の知見を持った人なら、この数字の凄さはすぐに理解します。まるで海外トップチームのトッププレーヤのデータを見ている感覚です。

  アタック効果率の定義は下式の通りです。

  アタック効果率(Attack Efficiency)                                 
  = [アタック得点(Attack Points) – アタックエラー(Attack Error)]
    /[総アタック数(Attack Total)]   [%]

  「アタックエラー」には「被ブロック」が含まれます。この日の井上選手のアタックエラーは0点。つまり被ブロック失点も0点。

  このブログで度々指摘していますが、日本女子代表の最大の課題は被ブロック失点の多さだと思っています。攻撃が単調で強打一辺倒。しかも下に叩きつけるアタックが目立ちます。

  しかしこの日の井上選手は、下に叩きつけるような危なっかしいパイクはほぼ皆無でしたし、フェイントやプッシュも交え、時には高橋みゆき選手ばりの「斜め上向きアタック」で相手ブロッカーの指先を狙うなど、『的を絞らせない攻撃』を徹底していました。日本バレーの知的財産を総活用した素晴らしいプレーですし、見ていて楽しいです。

  ちなみに日本バレーの知的財産をしっかり継承しているのは、海外選手に何人かいるのかもしれませんが、日本では石川祐希選手と高橋藍選手くらいかな、と言う感覚です。昨日の試合をきっかけに井上愛里沙選手にも正統継承者として名乗りを上げてほしいと思います。

  対して、アルゼンチンチーム各選手の得点力チャートも掲載します。

  9番の選手が素晴らしいですね。しかし日本の井上選手、宮部選手を前にその輝きは霞んでしまいます。

守備力

  次に守備力です。下が日本チーム各選手がこの日見せた守備力パフォーマンスです。

  林選手がレセプションをはじめとして安定の存在感を放っています。しかし、リベロの福留選手の存在感が今一つの感があります。VNL2023時はもう一人のリベロ西村選手が圧倒的に出場数が多かったはずですが、何か事情があるのでしょうか?やや気になります。

  次にアルゼンチンチーム各選手の守備力パフォーマンスです。レセプションがかなり乱れていますね。

  試合のハイライト動画を貼り付けておきます。

依然と修正されない謎のトス配分

  さて、井上選手、宮部選手の活躍が今後も楽しみな一方、古賀キャプテンがやや心配です。

  セッターの関選手は古賀キャプテンの調子を上げたい想いでトスを古賀キャプテンに集めているのでしょうか?しかし、むしろ逆効果に見えますし、得点効率と言う面で大きなリスクを負う危険なトス配分です。現在のトス配分(アタック効果率の低い選手にトスを多く供給)は確実にチームの勝率を下げる危険な選択です。

  バレーボールは相手チームより早く25点取ることでセットを勝ち取り、相手チームより早く3セットをとることで勝利するゲームです。「いつか25点取れば良い」でもなければ「いつか3セットとれば良い」でもなく、効率=スピードが肝心要なのです。

  一方、アタック効果率とは選手の攻撃力を示す指標で、その意味は「その選手に1本のトスを上げることで獲得する得点の期待値」を意味します。つまり、アタック効果率:60%の選手にトスを上げることに対し、10%の選手に上げることは得点期待値を1/6に下げてしまうことになります。仮にアタック効果率60%の選手に10本上げれば6点取れる計算ですが、10%の選手には60本上げなければ6点取れません。6倍時間がかかってしまうわけで、直接の敗因になり得ます

  この日、日本女子代表セッターはアタック効果率:10%に満たない選手にチーム最多の35本のトスを上げ、60%の選手には28本しか上げていません。こんなことをやっていたら、絶対に強豪チームには勝てません。「セッターはその日、アタック効果率の高い選手に多くのトスを配分する」は「1+1=2」と同じくらい基本中の基本ですし、明日からでも確実に実施できる簡単で、しかも確実に効果が上がる改善です。逆にトス配分を改善することなく、強豪国に「惜敗」でもしようものなら、どんなに辛いことでしょう?強豪国との対戦前に格下に足をすくわれたら、どんなに辛いことでしょう?

  バレーボールファンの一人として選手に辛い思いはさせたくありません。速やかなる改善を!

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